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「または、それほどの才覚のあるお方と帰蝶が見込んだか……、そのどちらかであろうな」
小見の方はやや楽観的に言うと、手にしている姫の文を、小さく、幾重にも幾重にも折り畳んでいった。
そしてそれを、何の躊躇いもなく側に置かれた火鉢の中に投げ入れたのである。
「お方様っ、姫様のお文を…何故…」
事情を知らぬ笠松が、当惑した様子で主人の横顔に目をやると
「何、今の世を生きるおなごとして、為すべきことを為したまでのことよ」
小見の方は娘との密事が紅蓮の中に消えてゆくのを、万感の思いで見守っていた。
村木砦の勝利から数ヶ月後の、同年四月。公司秘書服務| 為企業提供可靠專業意見| easyCorp公司易
満開の桜の木々が臨める清洲城の庭園では、城主・信友主催による盛大な花見の宴が催されていた。
真っ白な桜の花びらが風に乗り優雅に舞い散るその下で、川原兵助ら大和守家の家臣たちが、
青々と茂った芝の上に毛氈敷きの台座を各所に並べて、戦乱の世である事を忘れ去ったような赤ら顔で、飲めや歌えのどんちゃん騒ぎを繰り広げている。
その周囲は大きく幔幕が張り巡らされており、その内で集う家臣らの最前、室内で言えば上座に当たる位置に信友の意気揚々とした姿があった。
信友は家臣らよりも一段高い、桟敷席のような場所に座して
「さぁさぁ、守護殿もう一献。杯を伏せられるには些か早ようございますぞ」
「いや…これ以上は結構。もう十分頂戴致しました故」
「何を申されます、まだ半分も飲まれていないではありませぬか。宴はまだ始まったばかり、ささ、ご遠慮なさらず」
同席する尾張守護・斯波義統の杯に信友は恭しく酒を注いだ。
何とも居心地の悪そうな顔をして、義統がその一献戴くと
「此度の花見は守護殿への日頃の感謝を示す為に、それへ控える大膳の提案で催しましたもの。どうぞ心置きのうお楽しみ下さりませ」
「……」
「何せ、守護殿あってこその我が大和守家ですからな。あなた様がいなければ、今頃はあの信長の阿呆ぉめが、
平面づらに織田家の総領づらまでをもおっ被せて、己が本家とばかりに大仰な振る舞いを見ていたでしょうからな」
信友は冗談めかした口調で語りながら、やや歯並びの悪い口元を三日月形につり上げた。
彼らから一歩引いた場所に控える坂井大膳、織田三位、河尻与一ら重臣たちも、信友に同調するように白い歯を覗かせたが、その表情は何とも白々しい。
表向きは実権を失った主家の斯波氏を、織田宗家を名乗る正統性を保つ意味合いも兼ねて、
大和守家が長らく擁して来た訳だが、当の信友と義統の関係はとっくの昔に寒々しきものとなっていた。
かつて織田信秀の美濃進攻の折に、弾正忠家に対して手厚い支援を行った義統だったが、
宗家を名乗る大和守家の信友としては、義統と弾正忠家とが積極的に関わることを快く思っておらず、