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さて。美海さんはたどり着いたのかな?
今頃泣いていやしないだろうか。
沖田は向かうはずだった民家へ足を運ぶ。
どちらかというと森寄りのひっそりとしたところだ。
京の碁盤の目と違ってここら辺は結構ややこしいからなぁ。
沖田がふと動きを止める。
ちょうど大きな木がど真ん中に立っている別れ道だった。
その下でなにかが丸くなっている。
ちらりと茶色のハネた髪が見えた。
「…………」
この人、なにしてるんだ?
美海だ。
沖田はジト目で見た。公司秘書服務| 為企業提供可靠專業意見| easyCorp公司易
泣いてる?
肩が震えていた。
だが置いていかれる悲しみは沖田も嫌という程、身をもって知っている。
ここは私がなんとか慰めてあげなくては。
一向に顔を上げない美海に沖田は近づいた。
肩を叩く。
「美海さん」
声を掛けると美海は立ち上がり、沖田に抱きついた。
体温が伝わる。
そういや最近こうしてしっかり触ったことはなかったな。
自然と沖田の手は腰に回った。まるで壊れ物を扱うように柔らかく包む。
沖田の胸の中で美海はカタカタと震えていた。
きつく抱きしめてくる美海の頭を沖田は愛おしそうに撫でた。
よっぽどショックだったんだろうな…。
「落ち込む気持ちはわかります。でも「遅い……」
沖田の言葉に美海の声が被った。
「え?」
「……遅い」
顔を上げた美海は沖田の予想に反して唇を青くしながら震えていた。
「……え?」
「遅いですよ!」
あれ?
涙の欠片もない。
「ささささ寒いんです!」
美海は沖田の身体を更にきつく抱きしめた。
なるほど。分かりました。
私は火鉢代わりなんですね。そうですか。
「あったかーい!沖田さん暖かいですね!」
そうですか。良かったですね。あなたが幸せなら私はもうそれでいいです。
沖田は遠くを見つめた。
かなりの力で正直身動きが取れない。
どうして美海さんはこうも雰囲気を台無しにしてしまうのだろう。
そういう所が好きなんだけど。
沖田は自嘲じみた笑いを浮かべた。
「いやぁ!道が分かんなかったんですよ。それで沖田さんを待っていたんですが、一向に来なくって。本当寒いですね!」
美海はニカッと笑った。
沖田は美海に隠れて小さくため息をついた。
「着きましたよ。ここです」
沖田と少し歩いた後、すぐにそこは見つかった。
民家というより、宿屋らしい。
美海は沈黙の後声を洩らした。
「わぁ…」
その目はげんなりとしている。
美海は感嘆の声を挙げたわけではない。
なんというか…ボロいのだ。
今にも崩れ落ちそうなくらいボロいのだ。
「な!失礼な方ですねぇ!」
沖田は美海をパシンと叩いた。
「だって~!」
「新撰組の方ですか?」
中から澄んだ声が聞こえて二人は姿勢を正した。
40代後半ぐらいだろうか。
意志の強そうな綺麗な女将が出てきた。
「は、はい!」
新撰組を目の前に怯えた表情すら見せない。
江戸っ子気質だ。
なんとなく好感が持てた。
「土方さんから事情は聞いています。早くお入りになってください」
「あ。ありがとうございます!」
美海は背中を押された。
続いて沖田も押されるのだが、女将の手が止まった。
ジッと沖田の顔を見ている。
沖田はにっこりと笑った。
その瞬間女将の表情が変わる。
「総…ちゃん?」
自信のないか細い声で首を傾げている。
「お久しぶりです。お鈴さん」
沖田は笑ってそう言った。
女将はお鈴というらしい。
「やっぱり~!?あのはな垂れ総ちゃん!?大きくなって!」
「はな垂れは余計です」
「だってよく泣いてたじゃな~い!」
バシバシと沖田の背中を叩いている。
他人行儀であった先程とは全く違う態度だ。
知り合い?
「でもなんで言わなかったの?」
「昔お鈴さんに散々いじめられたんでその仕返しにと思って黙ってました」
「いじめてたわけじゃないのよ。ただ、ヘナヘナ泣きながらも土方さんに着いていく総ちゃんが面白くて面白くて!ついつい。ねっ」
「何がねっ。ですか」
沖田はふと今までの仕打ちを思い出して身震いした。
「相変わらずですね」
「まぁね」
お鈴は鼻を鳴らして笑った。