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「「竹殿」、どうした?」
安富がなだめるも、「竹殿」はおおきな頭を左右に振り振り、どんどん後ずさる。
「竹殿」だけではない。「梅ちゃん」やほかのお馬さんたちも、なにかを嫌がっているのか頸を左右に振っている。 史実では春日は五月十一日の今日、亀田新道というところで戦闘中に重傷を負ってしまう。そしてその翌十二日、つまり明日榎本が説得して服毒自殺することになる。
「土方君、土方君、土方君。公司秘書 今朝もきみの乗馬姿は最高だね」
大鳥は、あいかわらずである。
副長への愛が全開ですぎて、暴走が止まらないようである。
その大鳥の隣で、春日はあきらかにひきまくっている。
まだ二十五歳のかれは、だれかのブログによると「女性とみまごうほどの色白の美形」で、江戸の町をあるけば付け文が届いたそうである。
もちろん、
「どうした、才助?はやくしろっ!」
そのとき、俊冬演じる副長が怒鳴った。
それではじめて、「竹殿」の突然の「副長を乗せるのを断固拒否」状態の理由に気がついた。
かれは、俊冬が死ぬかもしれないことに気がついているのだ。
動物は、こういう機微に敏い。しかも、俊冬や俊春は動物と心を通わせることが出来る。
「だめだ、副長。「竹殿」だけでなく、愛しのお馬さんたちは副長を乗せたくないらしい」
安富も気がついたのだ。だから、わざとそういいきった。
「ったく、おれはお馬さんにも乗せてもらえぬというのか?」
俊冬演じる副長は、気味が悪いほど本人だ。表現はおかしいが、兎に角本物以上に似ている。
成り行きをだまってみていると、かれは「竹殿」にちかづいた。
そして、安富から手綱を奪い取った。
一瞬、無理くりに乗って振り落とされる、というコントでもぶちかましてくれるのかと期待した。
が、かれは「竹殿」のでかい額に自分のそれをくっつけ、しばらくじっとしているではないか。
なに?もしかして、テレパシーでも送っているのか?
「いい子だ」
それから、かれは「竹殿」にさっと跨った。
すっかりおとなしくなった「竹殿」に。
いや、俊冬。いまのは、副長にはぜったいに出来ないことだぞ?
「勘吾、八郎っ。まさか、ともにいくっていうのではないだろうな?おまえたちは、残って鉄と銀の相手でもしていてくれ。万が一ってことがあるだろう?」
「歳さん」
「土方さんっ」
馬上からいわれた二人は、同時に「竹殿」にちかづいた。
「兼定、おまえもだ。今日は、いつも以上になにもかもがすんなりいくような気がする。だろう、主計?」
副長を演じる俊冬は、蟻通と伊庭をスルーした。
かれは相棒に、それからおれにからではない。女性からである。
実際のところは?
自分自身もイケメンだし、イケメンを見飽きているので「こんなもんかな」っていうのが、かれにたいするおれの評価である。
「笑っちまう」
そのとき、馬上からささやかれた。もちろん、副長の声で。
副長演じる俊冬が、いまのおれのだだもれをきいていってきたのである。
ふんっ!笑われる意味がよくわからん。
だって、いまのはネタじゃなかったからな。
「健闘を祈っているからな。無事、弁天台場にいってかの地にいる味方を救ってくれ」
「ああ、案ずる必要はない。なにせおれは、「常勝将軍土方歳三」だからな。そうだよな、主計?」
「おれにふらないでください。だいたい、その常勝っていうのもぽちたまのお蔭でしょう?」
不本意きわまりないが、いまはかれに合わせるしかない。
「そのぽちたまは?」
榎本がキョロキョロしている。
「わたしの「シェリーココ」はどこかな?」
大鳥さん。あなたも気が多すぎですよね?
ちなみに、「シェリーココ」とはフランス語で、「わたしのかわいい子」みたいな意味である。
「おまえよりマシだと思うがな」
そしてまた、馬上からささやかれた。もちろん、副長の声音で。
「副長、いちいちツッコまないでください」
ここは、もちろん俊冬に合わせるしかないよな?
「土方さん。わたしが亀田新道よりの守護にまわるよう、進言されたのはなにゆえです?」
そのとき、春日が尋ねた。
俊冬のやつ……。
春日が助かるよう、ちゃんと手は尽くしてくれているんだ。
「簡単な話だよ、春日君。亀田新道で戦うのは無意味だ。それよりも、力を温存しておきたまえ。ここは、おれたちのような年寄りに任せてな」
俊冬演じる副長は、陽光に白い歯をきらめかせつつムダにカッコつけている。
こういうところまで不気味なほど似ている。いや、まんまである。
「は、はぁ……」
春日はどこか不満そうである。
それは当然だろう。
ヤル気満々なのに、五稜郭で待機していろっていきなり命じられたのである。
テンションがダダ下がりにもなる。
だが、そうしてもらわねばならない。
この日、かれをサポートできる者がいないからである。
ゆえに、不満だろうがテンションダダ下がりだろうが、後方でおとなしくしておいていただきたい。
「おいおい、かような