[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
「それじゃあ私と帰りましょう。私は桂さんが戻ったら家に帰ったと言伝してもらうように頼んで来るので仕度してここで待ってて下さい。」
三津はまたこくこく頷いて静かに廊下を駆けて行った。
入江は吉田に三津を連れ出す事を伝えに行った。
「稔麿ちょっと。」
https://www.easycorp.com.hk/zh/secretary
声をかけると吉田は不機嫌な顔で出てきた。部屋の中には高杉が居る。
「そこの馬鹿に身の危険を感じた三津さんを家まで送ってくる。」
「そうして。桂さんが戻ったら伝えとく。」
小声でやり取りをしてすぐに入江は玄関へ戻った。
戻ればすでに三津がいて草履まで履いて帰る気満々だった。
『余程帰りたいんだな……。』
入江を見つけると早く早く!と体を揺らした。
「お待たせしました。それにしても……あの馬鹿何したんです?」
「まだ何もされてませんけど笑顔で子供産んでくれって走って来たのがめっちゃ怖かったんです。」
「本物の馬鹿だなあいつ。」
想像出来たのがなお怖い。
「それは何かされる前に逃げて正解です。」
一刻も早くここから立ち去るべきだと三津を連れて藩邸を出た。
「晋作に会った事後悔しました?」
入江がにっと笑って顔を覗き混んだ。
「ちょっと……。悪い人やないから何とも言えないですけど。」
三津は苦笑いで返した。その返事に入江はくくっと喉を鳴らした。
「三津さんからすれば極悪人に見える人の方が少ないでしょ。優しすぎなんですよ貴女は。」
「そんな事ないですよ。些細な事でも腹立つ時はあるし。」
『そう言う意味じゃないんだけどな。』
そりゃ三津の不機嫌な顔は何度か見てるし怒ってる姿も見てる。
でも言いたいのはそこじゃなくて,自分自身よりも周りを優先させること。
どんなに傷付いても自分よりも相手の傷を気にしてる。相手の気持ちを気遣ってる。
『自分を犠牲にしてると分かってないのか?』
高杉から逃れられた安心感から気の緩んだ顔で笑う三津を見た。
「三津さんを一人にしたくないので桂さんが戻るまで家に居てもいいですか?」
また三津を知るための好機だと思った。
三津は心細いからそうしてもらえると助かると言って安堵の笑み。
『この警戒心のなさも自覚した方がいいのに。』
でもこれも好機とさせてもらおうか。
入江の口元が弧を描いた。何の事情も知らない桂はほろ酔いのいい気分で久坂と共に帰って来た。
「やっとお帰りですか。」
「また何かやらかしたのか?」
不機嫌さを隠すことなく出迎えた吉田に,どうせ晋作だろ?と呑気に言う。
「えぇその晋作が長州に戻る気になったそうで桂さんに話があると待ってます。」
桂と久坂は顔を見合わせてから吉田の後について部屋に行った。
そこには黒の紋付袴姿で背筋を伸ばして正座した高杉がいた。
「何だその格好は。」
桂は高杉の正面に座って吉田と久坂は戸の近くに正座した。
「そりゃ真面目な話やけぇ。」
「正装するって俺の無理やり着やがった。」
吉田は汚したらただじゃおかないからなと睨みつけた。
「で?話とは?」
「長州に戻って三津さんを嫁にする。俺に三津さんをくれ!頼む!」
「断る!」
胸の前で腕を組んだ桂はカッと目を見開き怒鳴りつけた。
「それが駄目なら俺の子を産んでもら……。」
「もっといかん!!ふざけてないでとっとと長州に戻らんか!!」
ほろ酔い気分も一気に吹っ飛んだ。高杉の言葉を食い気味に遮って怒鳴りつけ,お互い瞬きもせずに睨み合う。
「ふざけちょらん。三津さんが必要やと思った。この俺を支えつつも叱れる女子はおらんやろ。
そんな嫁が近くにおったら俺はもっと前に進める。長州を動かす糧になる。」